Interview

※ご注意事項。
このインタビューは『星の欠片の物語。しかけ版』のネタバレはありませんが、その手がかりになりえる部分や、ひとかけら版のエンディングについては触れられています。
完全にまっさらな状態で楽しみたい方はクリア後にご覧ください。

2020年7月某日の音声収録後、「星の欠片の物語」ヒロイン役の阿部里果さんにインタビューをさせていただきました。
本作の企画・設定・シナリオなどを担当されたかざみみかぜ。さんも交えて、阿部さんの思いや作品の裏話などをたくさん伺うことができました。 

作品への印象

――このたびはインタビューをお受けいただき、ありがとうございます!

阿部さん:ありがとうございます!

――プロローグ版の「星の欠片の物語、ひとかけら版」に引き続き、ご出演ありがとうございます。
まずは、本作に対する印象を教えてください。
本作のキャッチコピーは「全てはVRのための設定とシナリオとゲームデザイン」、ジャンルは「コミュニケーション謎解きアドベンチャー」なのですが、これらに対してどんな印象を持たれましたか?

阿部さん:ヒロインとのコミュニケーションで謎を解いていくなかで、力を合わせる必要があると思うんです。
でも、プレイヤーさんって間接的に操作する状況だし、ヒロイン自体も知識を失っている状態なので自発的に行動できないじゃないですか。
それってなんかすごくもどかしいなって思いましたね。

でも、プレイヤーさんとヒロインしかいない閉鎖的な空間の中でプレイヤーさんの手となり足となり頑張っている懸命な姿の彼女を見ていると、なんか愛着がわいてきて。
気づいたら、つかの間の癒しの時間になるな、って。
ゆっくり時間が流れてたんじゃないかな、って思います。

――そうですね。「もどかしさ」は本作のゲームデザインの重要な部分でもあるので、すごく的を射てらっしゃるご感想だなって思いました。

阿部さん:ありがとうございます。
「もどかしさ」は必要かなって思って。

――二人で協力して謎を解いていく、っていうのも重要な部分ですね。

阿部さん:バディみたいな感じですよね。

ヒロインへの印象

――次に、阿部さんが演じてくださったヒロインは名前が明かされていないんですよね。
そういったところも含めて、キャラクターへどんな印象を抱かれましたか?

阿部さん:そうなんですよね。
ちょっと「名前がないことに意図ってあるのかな?」って思いました。

――かざみさん:無論あります。
インタビュアー:ありますね。

阿部さん:そうですよね。
まだ、ちょっと、言えないんですかね……?

――はい、言えないんですけど……

阿部さん:そうなんですね。
私は「のじゃロリさん」っていう愛称で呼ばせていただいているんですけど……
年齢不詳ですよね。

――(笑い)
そうですよね。年齢が分からないですよね。

阿部さん:ほんとになんか読めなくて。一見、浮世離れしてるじゃないですか。
「人間ではない見た目をしているな」と思ったのと、プロポーションだったり、なんかこう……めくるめくものがあるなと。
話してみると喜怒哀楽が激しくて、しかも、どうやら記憶を失っているというので、非常に情報量が多い女の子だな、と思いました。

――かざみさん:いわゆる「のじゃロリ」キャラで、いっぱい知識があるキャラはよくいるんですけど、それをいったん失って精神的にも幼くなっているキャラっていうのはあんまり見ないですよね。
インタビュアー:そうですね。元々は知識いっぱいの女性だったはずなんですよね、彼女は。

阿部さん:ねー。そうですよね。

――「のじゃロリさん」って可愛い愛称ですね!

阿部さん:ね。皆さんはなんて呼んでくれてるんだろうなあ。

――かざみさん:「ぽんこつのじゃロリ」って呼んでる方もいますね。

一同:(笑い)

阿部さん:悪口じゃないか~、やめろやめろ悪口は(笑い)

――まとめると、情報量が多い。
あと、プロポーションとかも人離れしている、と

阿部さん:うん、なんか浮世離れしてるな、と。
服装も日本にない文化だな、と思って。
あとちょっと気になったのが、耳がとんがっているところで。

――インタビュアー:ゲーム中、耳がぴこぴこって動くんですよ。
かざみさん:ちなみにあれはケモノ耳です。産毛が生えているっていうことになってます。
インタビュアー:ふさふさなんです。

阿部さん:そうなんですね!
へー! そんな細部まで……!

――あと、やっぱり、口調って気になりますよね?

阿部さん:口調! そうですね!
彼女らしさを感じる……

――かざみさん:人生でまず、こんなに「のじゃのじゃ」言う機会ないですからね。

阿部さん:あー! 確かに(笑い)

――かざみさん:この口調と阿部里果さんの声のおかげで、キャラが立って完璧になっているなと思います。

阿部さん:プレイヤーさんがいざゲームを始めてみたら「あ! おまえそんなキャラなのか!」みたいなリアクションも結構あって。

――え! そうなんですか!?

阿部さん:そうなんですよ。
このヒロインを初めて見て、多分皆さんの中にイメージがあると思うんですよね。
で、声を聞いてみたら「え!?」「そんな口調なの!?」って驚かれている方が結構いて。

――インタビュアー:「外見とのギャップ」ということですね。
かざみさん:
落差が大きいほどやっぱり覚えてもらえる部分があるので、そこはちゃんと気をつけてキャラを立ててますね。

収録の際、意識したこと

――次に、今回の収録の際、どんなことを意識しながら演じられたか教えてください。

阿部さん:やっぱり、4年ぶりのブランクがあって彼女に再会をしたので、当時のテンションだったり雰囲気を取り戻すのにちょっと苦労はしました。
微妙なニュアンスが必要で。

あくまで「記憶を失っている」「知識がない」っていうのを汲み取って、無邪気に、「見るものすべてが新鮮な、ちっちゃい子供」っていうのに落とし込んで振る舞うことに忠実にしてました。
彼女は結構、見た目よりもだいぶ実年齢が下がってしまっているので。

――そこも、見た目とのギャップですよね。

阿部さん:そうですね。
彼女、ギャップだらけですよね。

「アニメやゲーム」と「VR」での演じ方の違い

――次のご質問です。
「アニメや一般的なゲームのキャラクター」と「VRゲームのキャラクター」を演じる上で、なにか違うことはありますか?
また、その違いによって工夫や苦労したことがあれば、教えてください。

阿部さん:なんだろうな……やっぱり「距離感」とそれによる「没入感」みたいなものの質は多分全然違うのかなって思います。
このVRっていうアイテムを使うことで、ある意味、いい意味でパーソナルスペースの概念が崩壊するじゃないですか。
まずはそこが崩壊するっていうのが、ひとつ大きい。

でも、その微妙な距離感を保ったまま「キャラクターの魅力を初見で出しちゃいけないな」って私は思っていて。
なんかもう、VRの時点でご褒美じゃないですか。360度見渡せて、ヒロインが「もしかしたら手が届くかも」みたいな距離にいるラッキーな状態。
そこですぐヒロインの全貌をすべて明かすのでは、まだステップが足りないと私は思っていて。
なんなら、こう、徐々に徐々に薄皮をめくって魅力が見えてくるように……VRの作品で演じるのであれば、そうやって私はアプローチしていきたいなって思ってます。

あと、VRの作品って1対1がやっぱり多い。
そんなに複数のキャラクターが出てこないから、たぶんニュアンスもまた違うんじゃないのかなって。

――「大勢出てくる登場人物の中の1人」ではなくて、プレイヤーとキャラクターの1対1っていう関係性ですね。

阿部さん:はい。「たった1人のあなた」。
関係性が強いと思いますね。

――すごい……! 演じるのが難しそうですね……

阿部さん:いや、でも、夢はあるなと思いますけどね(笑い)

阿部さん / インタビュアー:ありがとうございます(笑い)

阿部さん:VR、面白いですもんね。

――はい! 命を吹き込んでくださってありがとうございます。

VRに触れる機会

――次のご質問です。
「星の欠片の物語、ひとかけら版」のリリース当時は、今ほどVRゲームが一般的ではなかったように思います。
阿部さんご自身は、普段、VRの作品に触れる機会はありますか?

阿部さん:はい、ありがたいことにお仕事で作品で演じさせていただいたりとか、自分が出演している番組でVRの作品をプレイするっていうのもやったことあります。

――家庭用のVR作品ですか?

阿部さん:それでした。

――そうなんですね。
ゲームセンター的にVRの作品が遊べる施設もありますよね。
そういった所へ行く機会はありますか?

阿部さん:私は行くことはできなかったんですけど、そういう施設があるのは知ってます。
渋谷か新宿とかに結構大きい施設があって話題になってるなと思って。
しかも、私が出演させていただいた作品も設置されてたみたいで。

――そうなんですか!

阿部さん:結構反響を聞いて、嬉しかったです。
まず触れてもらわないと分からないですもんね、VRって。

――そうですね
やっぱり体験しないと分からないところはあると思います。
まず触れてみるのって大事ですよね。

阿部さん:そうですね。
ほんと分かんない。

――どんどんVRに触れられる機会が増えたり、状況も色々変わってきたのかなと思います。

阿部さん:エンタメ業界だけじゃなくて本当にいろんな現場で用いられていて、可能性を感じるなって思います。
これからどうなっていくのかな、と思いますね。

プレイされた方への質問

――次のご質問です。
本作をプレイされた方に、なにか質問してみたいことはありますか?

阿部さん:演じていて、セリフの中に比喩表現だったりとか伏線が散りばめられていて、それを回収したり哲学的なものを読み取るのを結構苦労して……

――かざみさん:すみません……
インタビュアー:(笑い)

阿部さん:あ、いえ、しょうがないんですけど、結構苦労したんですよ。
なので、実際にプレイされた方が物語を読み解いたり、謎解きをするのの難易度ってどうなんだろう? と思って。
なんなら私は「難しい!」って思うので、難しいと思う方と気持ちを共有したいです。
噂によると、すごい解読してくださっているコアなファンの方もいらっしゃるみたいで。

――はい、いらっしゃるみたいです。

阿部さん:むしろ、物語の解釈を教えて欲しいというか……
「あなたのなかのベストな伏線は?」みたいなのも教えてほしいです。
ほんとに色々散りばめられてますからね……

――そうですね。
私もシナリオなどを読んでいて「あ! これ、ここで回収したか!」ていうのがあったので……

阿部さん:そう!!
で、しかも、気付くタイミングが結構遅くて(笑い)
徐々に読み進めていく中で、「ああ、そういうことだったんだ」っていうのがありますね。

――そうですね。
あと、最初に仰っていたヒロインの呼び方でしょうか?

阿部さん:あ、そうですね。
どうしよう、悪口ばっかりだったら……
でもまあ、ね、正解なんですけど……(笑い)

――本当に皆さん「ぽんこつのじゃロリ」って呼んでらっしゃるんでしょうか……?

阿部さん:ねー、ひどい(笑い)

――かざみさん:もしくは、ただ「のじゃ子」って呼んでる方もいらっしゃるみたいですよ。

阿部さん:「のじゃ子」!
皆さんの呼び方が気になりますね。

メッセージ

――最後のご質問です。
これから本作をプレイする方へ、伝えたいことはありますか?
また、このインタビューを読んでくださった方へのメッセージをお願いします。

阿部さん:ひとかけら版のエンディングでのじゃロリさんが、「この世界を広めることで世界が再構築される」って言っていたんですよね。
まさにその「 プレイヤーの皆さんの思い入れ」があったおかげで、多分本作が作り直されたんだなってすごく思うので。
改めて、本当にありがとうございます、と皆さんにまずお伝えしたいですね。

だから、しかけ版はまさに「思い入れ」の賜物なのかな、っていうふうに思っています。
本作では、この「しかけ版」という名前の通り、「そうきたか!」って思うような仕掛けがやっぱり待っていると思うので、ぜひ何度でも、のじゃロリさんのことを救い出していただきたいなと思います。

――お忙しいなか、お時間をいただきありがとうございました!